総番長日記

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その時歴史が動いた 

もしも・決断の瞬間編
 

その時歴史が動いた 

源平争乱・元寇編
 

実は傑作?「ウルトラマンA」(3 

8月3日

「仮面ライダー」における“ショッカー”のような敵組織の存在は、「ウルトラマン」にはなかった。

基本的に1話完結。
登場する怪獣や星人(宇宙人)は毎回変わる…それが「ウルトラマン」の基本フォーマットだったからだ。

そのフォーマットが「ウルトラマンA」では変更になった。

「A」ではストーリー全体を通しての敵役“異次元の悪魔ヤプール人”が設定された。
それは昭和ウルトラシリーズの中でも「A」だけにしかない、特殊かつ大きな特徴だ。

事件を影で操る黒幕という意味ではショッカーもヤプール人も大差はないのだが、“人間ではない”分ショッカーよりヤプールの方がずっと“悪魔的”で厄介な敵だといえる。

なぜなら“悪魔”というものは、本来倒そうとしても倒せない相手だからだ。

そのヤプールの悪魔性が非常に顕著に現れている話がある。

「A」第4話「3億年超獣出現!」というエピソードだ。

この回で、ヤプール人のターゲットとなった人間は怪奇漫画家の久里虫太郎(くり むしたろう)先生。
演ずるは怪優・清水紘次(しみず こうじ)氏。

久里先生は、富と名声を手に入れる代わりにヤプールに魂を売り渡してしまった。
そしてヤプールの命ずるがままにマンガを描かされるのだが…。

「描け!描くのだ!久里虫太郎よ!」

ヤプールが命令すると久里先生はペンを走らせ始める…久里先生はヤプールの力を借りて、マンガに描いたことを現実にすることができた。
シーラカンスのような古代魚をモデルにした超獣ガランをマンガで描けば、それがそのまま現実の世界に本物の超獣となって現れる。

だが、魂を売り渡したと言っても久里先生は芸術家。
デッサンや超獣の暴れ方が少しでも気に入らないと…

「ウーン…違う!こうじゃない!」

とせっかく途中まで描いたガランの下書きを消しゴムでゴシゴシ消してしまう。
すると現実世界のガランも、消しゴムで消されたかのように忽然と姿を消してしまう…。

なんちゅうマイペースな奴…と、ヤプールもこんな男を侵略の先兵に選んでしまったことを激しく後悔したことだろう。
きっと、完璧を追求するあまりなかなか原稿を手離さない漫画家を相手にいつまでも待たされる編集者のような気持ちになったに違いない。
だが…久里先生がそんなこだわりと異常な執念を持った人間だったからこそ超獣という架空の生物に生命を吹き込むことができた、ともいえる…。

そんな、生殺与奪思うがままに造物主気分を満喫しながら芸術的漫画家ライフを最高にエンジョイしているかのように見える久里先生にもたったひとつ、どうしても手に入れることができないものがあった。

それは恋人。

「恋人が欲しかったら、それこそマンガで描きゃいいじゃん…」と凡人は思うだろう。
しかし、久里先生の芸術的感性はそれを許さない。

久里先生には長年の想い人がいた。
かつての小学校時代の同級生で、今は対超獣戦闘部隊TACで働いている女性、美川(みかわ)隊員だ。

久里先生は美川隊員を自宅に招き二人きりの同窓会を挙行…かねてから抱いていた想いの丈を美川隊員に打ち明ける。
久里先生の熱い想いを知ってドン引きして帰ろうとする美川隊員…だが、そこはさすがに怪奇漫画家。
先生の方が一枚上手だった。
睡眠薬入りの紅茶で眠らされ、美川隊員はロープで緊縛される。

この時久里先生は、美川隊員が眠っている間に、それこそやろうと思えばヤプールに与えられたマンガ能力を使ってこの女を思い通りに洗脳することがいくらでもできたハズだ。
しかし、久里先生の趣味がそれを許さなかった。

洗脳なんて美しくない。
美川隊員の唇に直接「好き」という言葉を言わせなければ意味がない。
彼女がそれを拒絶するなら、首を縦に振るまで調教するまでのこと。
時間はたっぷりとある、フフフ…と久里先生は思ったに違いない。
(もちろん、表向きは子供番組なのでそこまでの深い心理描写はなされませんが。)

そんな久里先生にとっての楽しい時間は、長くは続かなかった…美川隊員の危機を察知して、駆けつけたTAC(タック)の仲間たちによって美川隊員は久里邸から救出される。

想い人を奪われ絶望した久里先生は、失恋の痛みと悲しみの全てを原稿を描くことにぶつける。
悲しいことがあったとき、それを創作することでしか癒やすことができない…それが芸術家の性(サガ)だから。

久里先生の痛みが乗り移ったかのように、再び出現した超獣ガランは街を破壊し始める。
その前に立ちはだかるウルトラマンA。

「フン、現れたなAめ…戦え!戦えガラン!」

猛然とペンを走らせる久里先生。
完成した原稿が何十枚も宙を舞う。
ウルトラマンの変身時間は三分間…その間にそんな何十枚も…すごいスピードで描きとばしたら、さぞかし荒れた原稿に違いないでしょ…とおもいきや、カメラが映し出した久里先生の手元の原稿は実に丁寧で美しかった。
暴れるガランはもちろんのこと、ガランの攻撃…昔ながらのガーゼテクニックで表現された毒ガスを浴びて、苦しむウルトラマンAの姿までもがきっちりとペン入れされ、隅から隅までキチンと描かれている。
どんなに切羽詰まった修羅場だろうと、たとえ悪魔に魂を売り渡そうと…さらにいうなら、その仕事が悪魔から発注されたものだったとしても…“イイ加減な仕事は絶対にしない”!

漫画家たるもの、かくありたい。

そんな誇り高き漫画家の鑑、久里先生にも最後の時が訪れる。
Aの放ったレーザービームがガランに命中。
それに呼応したかのように久里先生の玉稿が燃えあがる。
苦しみ悶える久里先生。
さらにトドメの一撃、メタリウム光線をガランに浴びせるA。
ガランは木っ端微塵に砕け散り、久里先生の絶叫とともに久里邸も大爆発する。

絶筆&爆死!

こうして、一人の漫画家が切なく豪快にその生涯を閉じた…。

…このエピソード、何が凄いかというと、一見ウルトラマンA対超獣のように見える戦いが、実のところAと戦っているのはたった一人の漫画家、ひとりの人間(の執念)だったという点。

本来敵であるハズのヤプールは、人間の歪んだ欲望に目をつけ、それを実現するのにちょっと手を貸してやっただけで、自ら直接侵略の手を下してはいない。

そこがヤプールという敵の本当に恐ろしいところだ。

人間の心は弱い。
悪魔というものはその心の弱みにつけ込んで誘惑してくる。
人間にできるのは、その誘惑を勇気を持って注意深く遠ざけることだけ。

“何でもお前の望みを叶えてやろう”と言われたら、私はその誘惑をキッパリはねのけることができるだろうか?

「A」の初期には、そういうことを考えさせられる深イイ話が結構あった。

これまた余談だが、実相寺監督が演出された「ウルトラマンダイナ~怪獣戯曲」に私がエキストラで参加させていただいた際、撮影現場で清水紘次氏にお会いすることができた。

「清水さんが演じられた久里虫太郎先生は、僕にとって理想の漫画家像です」と清水氏に話すと「オレ…そんな役やったっけ?」と氏は当時のことをほとんど忘れていらっしゃった。

しかし、私がお願いすると「ウーン…フラッシュマンのリー=ケフレンでサインすることは結構あるんだけど…この役でサインするのは初めてだなぁ」と照れくさそうに笑顔を浮かべながら“久里虫太郎~清水紘次”とサイン帳にサインしてくださった。

その時の清水氏の笑顔は…まぎれもなく久里虫太郎先生そのものだった。
私の大切な宝物である。

(続く)  
2009/08/04 07:21|特撮魂TB:0CM:0
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自画像 

加藤 礼次朗

Author:加藤 礼次朗
1966年3月8日生まれ。
職業:漫画家。

1986年描き下ろし単行本
『まんが音楽家ストーリー ベートーベン』でデビュー。

映像界では、イラストや友情エキストラ(出演)、2007年にはオペラ「魔笛」の衣装デザインを手がけるなど漫画界以外でも幅広い活動をしている。

 

コミック版『はやぶさ 遙かなる帰還』 

 

ホーム社(発売元/集英社)より絶賛発売中

夏目漱石の「三四郎」 

 

ホーム社(発売元/集英社)より絶賛発売中

まんが音楽家ストーリー3 

ベートーベン
 

まんが音楽家ストーリー8 

バイエル
 

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