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『別冊映画秘宝 実相寺昭雄研究読本』その3。 

5月21日

「加藤、急げ!早くしないと俺はイク。俺がイク前に本を出せ!」

私が『ウルトラマン誕生』(ちくま文庫/筑摩書房刊)の挿絵作業をやっている最中、実相寺(じっそうじ)監督から言われたのは「それだけ」でした。

実際、監督に残されていた時間には限りがあり、それは御自身も…勘の鋭い方でしたからわかっていらっしゃったんじゃないでしょうか。

監督の命の期限とは別に、筑摩書房さんとしても既刊の文庫化ですからそれほど時間はかけられない…という事情がありました。

ですから私も「よしよし、以前よりいいイラストになっているぞ」と思ってもゆったり自己満足に浸っているような時間は全くありませんでした。

なにしろ挿絵といっても1、2枚ではなく、特撮のメイキング本ですからわかりやすく図解化されたようなイラストを何十枚単位で描かなければならず(しかもそれは自分から「どうかやらせてください」とお願いしてやらせていただいたものなので)本当に大変でした…。

でもわざわざ直しただけあって、見て読んでわかりやすい「意味のある挿絵」になったと自分では思っています。
まだ買っていない人は是非買ってお読みください。

ただ1か所だけ…

絵コンテを説明する章で、例として使われている「スカイドンと科特隊の攻防」の絵コンテが…
ここだけは時間が足りなくて描き直すことができませんでした。

でも本当は、この絵コンテの部分は「実相寺監督に描いてほしい」と私は思っていました。

『ウルトラマンの東京』の監督御自身が描かれた挿絵を見ていただければわかると思いますが、もともと絵ごころのある実相寺監督の描かれるコンテの絵はたいへん味わい深く、使うなら是非それを使ってほしいと思ったのです。

しかし、1990年の時は先にも書いたとおり監督が撮影で忙しくて駄目でしたし、文庫版の時は筆を持つのもしんどいという体力的な問題がありました。

それでも実相寺監督は最後の最後まで…本当に「この体のどこからこんなエネルギーが出てくるのか?」と思うほど精力的に働き続けていました。

それは「生への執着」という以上に「最後の最後まで、この世でできることは全部やり尽くしておきたい」…「異常ともいえる創作への執念」のように私には見えました。

本当に最晩年の監督はあまりにもいろいろなものを同時平行で進めようとし過ぎていたため、本当の「最後の仕事」が何だったのか?

私にもわかりません。

一般的に「遺作」とされている『シルバー假面』も、江戸川乱歩原作の『青銅の魔人』の映画化と同時進行していました。

私がコダイのプロデューサーから「ちょっと手伝いに来て」と呼ばれた時も『シルバー…』なのか『青銅…』なのか、どっちのお手伝いなのかしらと一瞬迷ったほどです。

私は『シルバー假面』では、美術監督の池谷仙克(いけや・のりよし)さんがデザインされた「シルバー假面」の後ろ姿や、カリガリ博士が作ったオートマタ鋼鉄の処女ロボット「マリア」のラフスケッチなど補足的なデザイン、森鴎外(もり・おうがい)が旅するドイツ山中のマット画(合成用の背景画)などを描きました。

同じ頃、実相寺監督の推薦で『月の世界』(ハイドン/作)というオペラの衣装デザインもやらせていただきました。

『月の世界』は『魔笛』と同じく「実相寺組」制作スタッフによる舞台でした。
本来は実相寺監督が演出を手がける予定になっていた作品でしたが、監督がそれをやるには体力的に厳しい状態になっていました。

2006年11月29日は『月の世界』のゲネプロ(本番と同じ状態で行う通し稽古)の日でした。

昼過ぎに、私は照明の牛場(うしば)さんに舞台袖でふいに呼び止められて言われました。

「実相寺がもうあぶないらしいんだ。加藤も覚悟だけはしておいてくれ。」

ゲネプロが終わってから、私は牛場さんたちと一緒のバンに乗せてもらい、そのまま監督が入院されている御茶ノ水の順天堂病院に駆け付けました。

病室に入ったとき、室内にはコダイのスタッフが静かに並んでいて、なにか「監督からの指示が出たらすぐ動けるように待機している」…そんな風に私には見えました。

しかし監督はもう会話ができるような状態ではなくなっていて、意識もなくなったり、戻ったり…行きつ戻りつしているようでした。

それを堀内正美(ほりうち・まさみ)さんが、監督の横で一生懸命声をかけて引き止めている…堀内さんが声をかけると監督の意識がちょっとだけ戻ってくる…そういう感じに見えました。

「監督!原さんが帰ってくるまでイっちゃ駄目ですよ!わかってますね?」

原さんとは監督の奥様、原知佐子(はら・ちさこ)夫人のこと。
その時は地方公演の舞台をやり遂げてから病院へ向かっている最中でした。

私は、その場で何をしたらいいのかわからず一瞬フリーズしてしまいそうになったのですが、堀内さんのそのひと言で「いまやるべきこと」、自分の役割がハッキリ見えたような気がしました。

「なるほど…原さんが到着するまで監督の魂をこの世につなぎ止めておかなきゃならないんだな。」

「そうだ加藤、じゃあお前はどうやって俺の魂をつなぎ止めてくれるのかな?ふふふ」…と

会話できなくても、監督の意識はハッキリしていて…監督の魂が病室のどこかからジッとこちらを見ている…私はそれをハッキリと肌で感じました。

台本もなく、いきなり舞台の上に引っ張り上げられた即興劇の役者です。
私なりに必死でセリフを考えました。

監督がいやでもこの世に帰ってこなければならないネタはなんだろう…。

実はその日の午前中に、私は筑摩書房のA木さんから「『ウルトラマン誕生』が売れ行き好調につき3刷り(第3版)がかかりまして…」という電話連絡をいただいていました。

「私のほうからも言いますが、加藤さんがもし監督にお会いすることがありましたらお伝えください」と…。

私は「これだ!」と思いました。

「予算が潤沢だったことなど一度もない」と、監督はよくおっしゃっていました。

そんな、一生予算に苦しめられ続けた実相寺監督をこの世に引き止めるものがあるとしたら…それはやはり「お金」なんじゃないか?と。

だから私は監督に言いました。

「監督!A木さんから連絡があって『ウルトラマン誕生』の3刷りがかかったそうですよ!印税が入りますよ!その印税…使わなくていいんですか!?」

と。

************************

私の後ろにいらっしゃった中野貴雄監督は、たぶんその言葉を聞いて

「印税の使い道?…そうか、エロいフィギュアを買いに行くのかな」とか

「おれも何か面白いことを言わなけりゃならないのか?」とか思われて

頭の中が真っ白になって記憶違いされちゃったのかもしれません。

中野監督の目の前で、むやみに「ハードルを上げてしまった」…私の責任ですかね。

どうも申し訳ありません。

ちなみにその時、私の言葉に実相寺監督は「おぅ…」と言って、ちょっとだけ反応してくれました。

忘れられません。

『実相寺昭雄研究読本』…読むと思い出して寂しくなってしまいそうなのでまだじっくり見ていないのですが、これからゆっくり読もうと思います。

それにしても洋泉社のO沢さんは、こんな中身がギッシリ詰まった濃ゆい本を何冊も連発して…大丈夫なのかな。

倒れないでくださいね。  
2014/05/21 19:47|独り言

自画像 

加藤 礼次朗

Author:加藤 礼次朗
1966年3月8日生まれ。
職業:漫画家。

1986年描き下ろし単行本
『まんが音楽家ストーリー ベートーベン』でデビュー。

映像界では、イラストや友情エキストラ(出演)、2007年にはオペラ「魔笛」の衣装デザインを手がけるなど漫画界以外でも幅広い活動をしている。

 

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まんが音楽家ストーリー3 

ベートーベン
 

まんが音楽家ストーリー8 

バイエル
 

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